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2013年10月

昭雲工房・山田尚公さん

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よく冷え込んだ朝、岡山の県北の町、奈義町は深い霧に包まれます。
この日の朝も朝霧が立ちこめていました。
私が山田さんを訪ね、昭雲工房を訪れたのは午前10時。
広い農地の中に昭雲工房がありました。まだ朝霧は残っていました。
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昭雲工房は30年以上前に近くにあった学校の校舎を移築した建物だそうです。
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工房は山田さんの祖父、「叩き彫」の初代昭雲の名。
その技法は山田さんの父、2代目昭雲、そして現在の山田さんへと受け継がれています。
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木彫・木版 山田尚公さん

1956年、岡山県勝田郡生まれ。津山高校卒業し、東京農工大学へと進学。
農学部林産学科を
卒業され、帰郷。木彫を始められたのは大学卒業後のこと。
祖父の木彫と棟方志功の板画から直接教えを受けた父2代目昭雲の叩き彫を受け継ぎ、
仏像などの木彫刻(
叩き彫)、木版画を作り続けている。
保田興重郎の歌「木丹木母集」の作歌を木版画にするのもライフワークのひとつ。
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玄関で出迎えてくれるのは山田さんが作った木彫りの仏像、日本の神さま。
ゴツゴツとした体躯、肢体から感じる力強さと、
一方で横長の丸顔の目を閉じた表情から感じる柔和さ、
木そのものから感じる存在感にたじろいでしまいました。
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“今の自分はこの環境によって作られたものがほとんど”

祖父の代から棟方志功さんと深い交流があり、山田さん自身も子供の頃、
棟方志功さんとお会いしたことがあるとのこと。
幼少、少年、学生時代と日常に木彫りがあり、
日々、祖父、父から棟方志功さんの話題が上がる、
そんな家族の中で育ったことが今の山田さんのルーツ。
棟方志功さんの話にはいつもどこかに感動があったとのこと。

初めて木版画を作ったのは小学校に上がる前。
父からもらった子供向けの古事記の本を元に作成されたのだそうです。

日本古来の伝統技術である木彫刻を祖父の代から引き継がれた技法で作品を作り続ける山田さん。
作品の根底には常に初代そして2代目山田昭雲、棟方志功の作風から培ったものがあるんですね。

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“作品は自己表現というよりも、木彫り、木版を通じた人との繋がりや、木彫り、木版を通じて人に喜んでもらいたいという気持ちが強い”
これまでもいろんなところで木版画のワークショップを開催されてきて、
ワークショップ参加者の方々が自分の作品が出来上がっていくに従い、
徐々に集中度が高まり、熱を帯びていくのを見て、
体験だからこそ得られるものが参加者だけでなく、教える側にもあると。

 


今では若い世代の工芸作家をさまざまな側面から支援されている山田さん。
先日、津山文化センターで開催された、美作工芸作家展「クラフトデイズ」もその一つ。
岡山県北、美作地域には技術的にも優れた若い世代の工芸作家さんがいらっしゃるとのこと。
個々の活動に光をあてるとともに、作家同士、作家とお客さんなど、
人と人との繋がりが広がっていくことを期待したいと。
作家としてだけでなく、美作地域で長く作家活動をされてきた山田さんだからこそ、
この地域でできることをしていきたいとの思いを話して下さいました。

 

体験クラフト市のワークショップでは木版画を行います。

ハガキサイズで、道具、材料、用紙など、すべて山田さんがご用意して下さいます。
自分で下絵をデザインするのは難しいと思われる方もいらっしゃると思いますが、
山田さんが下絵も準備して下さっています。
来年の干支の下絵なども用意して下さっているので、
来年の年賀状を木版画で送ってみるのはいかがでしょうか。
もちろん下絵を持参されてもよいです。

 

ワークショップ会場の旧郵便局が山田さんの木彫作品でいっぱいになる光景が目に浮かびます。

お話を伺うこと2時間。
昭雲工房を出てみると、澄み渡る空が広がっていました。
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昭雲工房

〒708−1326

岡山県勝田郡奈義町上町川1803−10

0868−36−5977

http://www.h3.dion.ne.jp/~tadaka/index.htm

tadaka@d7.dion.ne.jp

 

 

平松竹細工店 平松幸夫さん

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勝山の伝統的工芸品である竹細工。
そもそも勝山の竹細工は、農家の方が冬の間に作り、農業の道具として使われていました。
そうけ、めしそうけ、米あげそうけ、と呼ばれる工芸品、その起源は江戸時代末期とも言われています。
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平松竹細工店 平松幸夫さん
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岡山県早島町出身。
勝山の竹細工職人との出会いが勝山への移住のきっかけに。
平松竹細工店の看板を掲げてから4年。
自ら竹を採取し、一貫して作品の完成まで手作業で行っている。
伝統の製法を守りながらも独自の探究を編み込む竹細工を制作している。

 

もともと自然農法に興味があり、自然農法を学ぶ中で竹細工との出会いがあったといいます。
 

平松竹細工店は勝山武家屋敷館のすぐ近くにあります。
店の駐車場も、店の中も竹がところ狭しと置かれていました。
先日、真竹を採りに岡山県賀陽町に行って来られたとのこと。

その辺りの竹は良質で、弾力、粘り、艶など、全ての点において優れていると。
中でも、特に叩いて甲高い音がし、色つやが良く、節が平たく、節と節の間が長く真っ直ぐな竹が竹細工に適しているのだそうです。
 

竹を割って、ヒゴを作る作業を見せていただきました。
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竹は鉈(なた)のような道具で、竹の線維に沿って裂いていきます。

竹の皮に対して直角に道具を当てて裂き、次は平行に道具を当てて裂いていく。
最後には厚みが均一なヒゴにしていきます。
竹の状態を指先で感じ取りながら、微妙な力加減で竹、道具を操る技術が必要とのこと。

勝山の竹細工の特徴の一つとして、竹の皮の青い部分も使います。青い表皮の部分と黄色い内側の部分、その2色で編むと柄ができます。組み合わせ方でいろんな柄ができるわけです。

例えば、平松さんの人気の作品のパン籠。

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「そうき」または「そうけ」という、かつては農作業の道具として日々使われていた籠、ざるをパン籠に使うというのは今の時代に合っていますね。

籠は使い込んでいくうちに竹の青い部分も、黄色い部分も色が変化し、飴色に変わっていく。
緑の縞模様もきれいですが、焼きたてのパンにはやや飴色がかった色の方が似合うかもしれませんね。

 

パン籠の他に、台所で野菜の水切りに使える炊事籠もあります。
使う方の工夫次第で、パンやおにぎりをのせて、時にはうどんや蕎麦を盛って食卓に出したり、小物や小さい道具などを入れたりと、いろいろ使えそうですね。

 

手提げ籠なども作っておられますが、バックとして使うもよし、台所などで収納として使うのもおしゃれな感じがします。
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ワークショップで作成するのは四海波籠。
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四海波籠は京都の伝統花籠で、重なる波を思わせる曲線美が特徴。
竹を小割りにしてヒゴを作るところから行います。
難しいのは網組なんだそう。
網み進めて行く方向は平松さんがわかりやすく指導してくれます。

現在、勝山文化センターで平松さんの作品が展示されています。
四海波籠に花器を入れて、花を飾るのもきれいですね。

 

平松竹細工店

7170013

真庭市勝山7191

e-mail:take-kago-ya64@willcom.com

 

郷原漆器 木地師・髙月国光さん

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600年の歴史を持つ郷原漆器ですが、戦後には一時生産が途絶えたこともあります。
しかし、郷原漆器を愛する人たちの熱心な研究と協力で平成元年に見事復活しました。
お椀や木皿はどれもシンプルなデザインが特徴。
日々の暮らしに漆器を取り入れるのも、私にとってはちょっとスペシャルな感じがします。

髙月国光さん/木地師
倉敷市生まれ。
大学卒業後に石川県立山中漆器産業技術センター・石川県挽物轆轤技術研修所で4年間修行、
2003年6月から真庭市蒜山に居を移し、郷原漆器の木地師となる。
現在、「郷原漆器の館」館長。第60回日本伝統工芸展/木竹工部門、欅造盛器で入選。
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ありきたりな質問のですが、木地師を志された理由を聞いてみました。

髙月さんからは“JAPANですよ!”との回答。

 えっ、今流行りのクールジャパン(Cool Japan)ですか?

漆器は英語でjapanと呼ばれるとのこと。

お話は髙月さんが学生時代に空手で活躍されていた時のことにさかのぼります。
 “大学時代に空手でヨーロッパ遠征に行ったときの現地の方々の対応と、
旅行客として滞在したときの現地の方々の対応の違いを直に感じ、
伝統を重んじるヨーロッパで伝統文化に対する思いに変化が生じた。
その後、大学卒業後に出会った師の導きもあり、木地師を志すようになった。”のだと。

随分省略してしまいましたが、空手で培った心、体、そして人格が木地師としての髙月さんの原点なんですね。
高月さんの立ち振る舞い、構え、また受け答えから感じられるものが確かにあります。

実際に木地挽き作業を見せていただきました。
郷原漆器の特徴は、地元に自生するヤマグリの木を素材として用いること。
まずは生木を切り、年輪を中心に型をとり、電動糸鋸でくり抜きます。
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 ここからが木地挽き作業。
その前に木地を削るための長い柄の刃物、鉋もご自分で作られるとのこと。
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鉋そのものを作るのも木地師の仕事だそうです。

足元のレバーで轆轤の回転数を調節。
鉋の柄を脇にはさみ、刃先と脇にはさんだ柄の間に支点を置き、
体、手首を微微妙に傾け、ひねりながら、
最初は荒く、徐々に慎重にそして微妙な力加減で削られていきます。
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でできたのがこちら。
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 さすがの職人技と言いますか、動きに無駄やブレがない。
 木地挽きの後の工程、今回は中塗り、拭き漆の作業を見学させていただきました。
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 漆を塗る作業は郷原漆器生産振興会の女性の方々が担当されていますが、
郷原漆器の特徴である美しい木目はこの拭き漆によって生かされてきます。

漆を塗って、乾かし、そして磨く。この作業を幾度と繰り返すことで、
自然の風合い、木の温もりが感じられる郷原漆器に仕上がります。

 体験クラフト市のワークショップでは、髙月さんの手ほどきにより木地挽き体験を行います。
すでに11月23日(土)は午前・午後共に予約が埋まってしまいましたが、
24日(日)はまだ予約可能です。とても貴重な体験になると思います。

郷原漆器の館[郷原漆器生産振興会]
〒717-0602 岡山県真庭市蒜山上福田425
TEL 0867-66-5611
http://www.goubara.jp/yakata.html

ミネラル野菜倶楽部の野菜販売

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蒜山高原は真庭市北部に位置する、標高500600mの高原地帯。

冬は雪が積もり寒さの厳しい土地ですが、肥沃な「黒土」と夏の涼しい気候に恵まれた、
岡山県内でも有数の野菜の産地でもあります。

山田農園さんは蒜山高原の恵まれた環境を大切にしながら、農薬や化学肥料に頼らない栽培をされています。

 

ひるぜん高原 山田農園・山田栄子さん
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突然の私の取材依頼にも快く対応して下さった山田さん。
なんと出身は新潟県で、その後は東京で生活されていたそうです。
蒜山はご主人の出身地。子供さんが生まれたことをきっかけに、ご家族で蒜山に移住されたんだそうです。

 

山田農園さんのホームページのトップにはこう記されています。
 

「体がよろこぶ野菜とお米 蒜山高原からお届けします」

 

土壌を分析し、土壌を作る。堆肥・有機質肥料・ミネラルを必要なだけ、バランスよく使い、元気でたくましい野菜作りに取り組んでいるそうです。
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この時期は葉物野菜が旬を迎え、かぶ、サラダ白菜、ベビーリーフ、小松菜が収穫を迎えます。
山田さんの畑の葉物野菜には蝶などの虫対策のための虫除けネットがかけられていました。
丁度、私が畑に伺ったときもモンシロチョウが飛んでいたのですが、虫除けネットをしていないと葉物野菜はすぐに虫に食べられてしまうのだそうです。
晴れた日は葉に太陽の光を浴びさせるためにネットを外されるそうなのですが、虫との闘いは本当に大変だとおっしゃられていました。

今年は5月の干ばつ、夏は蒜山でも平均気温が26℃とこれまでにない猛暑、また集中豪雨によって畑が水没してしまうという被害にあったとのこと。環境変化への対応も頭を悩ませるとおっしゃられていました。

大変な被害にあっても前向きに自然と向き合いながら、人も作物も、土壌環境も元気にしていく山田さんの取り組みに、農業の知識のない私はただ感心するばかりでした。

山田さんから「かぶ」をいただいたのですが、小ぶりで丸っとしていて、その容姿からもみずみずしさが感じられ、まずは見た目に感動。
自宅に帰って、「かぶ」をきれいに洗って、その白さにさらに感動。皮のまま一口いただいたのですが、みずみずしさ、軟らかいけど適度な歯ごたえ、かぶの甘みに驚嘆の声を上げてしまいました。
山田さんのおすすめの「浅漬け」を茎、葉も合わせて作り、実の部分ももちろんのこと、茎や葉も軟らかく、しゃっきり、しっとりの歯ごたえ、口当たりに、なんとも言えない幸福感に包まれました。

大げさなことを言ってるのではとお思いになる方もいらっしゃるかもしれませんが、これが私の正直な感想なんです。

『勝山町並み・体験クラフト市』では、山田さんもその一員である【ミネラル野菜倶楽部】が新鮮な旬の野菜を販売します。山田さんは、かぶ、ベビーリーフ、ポップコーンのとうもろこしなどを販売されるそうです。
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体がよろこぶ野菜、そんな実感の沸く野菜を一度食べてみてはいかがでしょうか。
何か食に対する新しい発見があるかもしれません。

この場を借りまして、
“山田さん、いろいろとありがとうございました。また明日から元気に頑張ろうという気持ちがムクムクと沸いてきました!” 
(矢鳴) 

ひるぜん高原 山田農園
http://yamadafarm.com/ 

山田農園さんの野菜は、上記のホームページからインターネットで購入できます。
蒜山高原の道の駅「風の家」などの野菜直売所、大阪府高槻市の「真庭市場」でも販売されているそうです。

ひのき草木染織工房・加納容子さん

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今では『のれんの町』としても知られるようになった勝山。

勝山町並み保存地区の「のれん」を手がけたのが、【ひのき草木染織工房】の加納容子さん。
各々の家の商売や屋号、家紋などをあしらったのれんには、住まい手の心がデザインとして表現されています。
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 加納容子さん/染織家

1947年岡山県勝山生まれ。女子美術短期大学デザイン科、生活美術科卒業後。
1996年に勝山町並み保存地区にて、のれん制作を手掛け、現在に至る。
直島ののれんプロジェクトにも参加し、直島・本村地区の14軒の家にオリジナルののれんを制作。

 【ひのき草木染織工房】は築250年の加納さんの生家。かつての造り酒屋は現在自宅兼工房兼ギャラリー兼店舗。

のれん、マフラー、ラグ、コースター、手ぬぐいなどなど、淡く、深い、やさしいグラデーション、自然と心が落ち着いてくるような色とりどりの作品が展示販売されています。
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加納さんのデザインはすべてしぼりで描かれます。

のれんのオーダーがあると、その住まい手との対話の中からイメージを膨らませ、
デザインを考えていくそうです。
色もそうですが、デザインについてはいつも頭のどこかで考えていると。
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工房では植物や虫から染液を作ったり、染液を煮立てながら布をひたして染めたり、すべてが手作業で行われています。

自宅の中庭で取れた「ざくろ」からは黄色、「臭木(くさき)」からは緑が。
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ありきたりな質問ですが、加納さんの好きな色を聞いてみましたが、
「茜」の赤、サボテンに寄生する貝殻虫の「コキニール」から取れる上品なグレーがお好きなんだそうです。
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これがコキニール。
桜の花びらを食べた虫の糞も染料にするのだそうですが、きれいなピンクに染まり、煮出す時には桜の臭いがするとのこと。驚きの連続でした。

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これが桜の花びらを食べた虫の糞だそうです。 

 

ハンカチを染める手作業を見せていただきました。
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輪ゴムを使ってハンカチを縛る作業。縛り方によってさまざまなデザインに。

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染料を火にかけて、染料の温度を上げながらハンカチを浸していく作業。

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水洗い作業。
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加納さんの自宅には井戸水がくみ上げられていて、夏は冷たく、長い時間手が浸けられないそうですが、
冬は湯気が上がるぐらい温かいそうです。 
輪ゴムをとってみると、こんな仕上がりに。

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体験クラフト市のワークショップではベンガラ染めを行います。

ベンガラ染めは煮立てる必要がなく、どなたにもお楽しみいただけるそうです。
輪ゴムでしぼりを行い、作った人のオリジナルの作品ができあがります。

 

勝山の話、草木染めの話、バイタリティに富む加納さんのお話を伺いながら、
そこで出会った人達と手仕事をともにするのも、体験クラフト市の魅力だと思います。

 

250年、うなぎの寝床のように奥行きの深い工房。自然の色に満たされる空間にあなたの色を見つけにいらして下さい。

ひのき草木染織工房&ギャラリー
717−0013
岡山県真庭市勝山193
0867−44−2013
studiohinoki@gmail.com
http://hinoki.exblog.jp/
 

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